なぜアダルトビデオはわいせつ物頒布等の罪で処罰されないのか
10-09,2011
そもそもなぜわいせつ罪で処罰されるのか。
これについて判例は一貫して「性行為非公然の原則」をその判断の前提にしている。
つまり、「いやらしいことはコソコソ隠れてやるもので人前に晒すものではない」ということだ。
この「性行為非公然の原則」に基づいて刑法174条や175条が定められている。
刑法
第百七十四条 公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
第百七十五条 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。
ここでいう「わいせつ」とは裁判所の判例によれば、
「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反する」
ものをいうとされている。
わかりやすいようにこの定義を区切ってみると、
①徒に性欲を興奮又は刺激させること
②普通人の正常な性的羞恥心を害すること
③善良な性的道義観念に反すること
ということになる。
アダルトビデオなどはこの3つの要件を全て満たしているように見えるのに
ネットでも実店舗でも普通に買えるのはどうしてなのか?
性器が見えなければいいのか?
この点、性器を見せず、性行為を写したのでもなく、
俳優の演技でそのように見えるようにしたポルノ映画ですら
わいせつ性が認められており(最判54・11・19)、
性器が見えるか否か、「裏」か「表」かは決定的な要素ではないといえる。
ますます訳がわからなくなってきた。
性器が見えても見えなくてもわいせつ性が認められるのに、
上に挙げたわいせつの3要件を満たしているように思えるアダルトビデオは普通に売られている。
では、今売られているアダルトビデオは合法ということになるのだろうか。
これも違うようだ。
実務家のための刑法概説 六訂版 川村博著 近代警察社 P535 より引用
「同じ程度のものが検挙を免れていたり、同じ物が一定期間検挙されなかったということがあっても、わいせつ性を否定したり、犯意を否定すべき理由とはならない。すなわち、そのような事情があっても、それは、その作品にわいせつ性がなかったからではなく、その度合いが薄いとみて取締当局が検挙・起訴を控えたことも考えられるし、また全国的に多数のポルノ映画・小説・写真誌などが大衆の前に次から次へと大量に提供され姿を消してゆくなかで、どれを検挙するか、どの程度以上のものを特に起訴するかは、他への影響もあって、細密周到な考慮を払わねばならないのであるから、不検挙・不起訴が、そのまま取締当局において、わいせつ性がゼロであると判定したことに結びつくものとはいえない」
つまり、アダルトビデオが売られているのは合法だからというわけではなく、
①わいせつ性の度合いが薄いものは警察が取り締まるのを控えているだけ
②大量のポルノのうちどれを取り締まるかについての判断は技術的に困難である
ということであるに過ぎないようだ。
結論としては、アダルトビデオにはわいせつ性があり、本来処罰の対象になるが、
大量に出回っているポルノ全てについてわいせつ性を判断して取り締まるのは不可能であるから、
性器の露出の有無を一応の基準として、
たまに見せしめ的に摘発しているということなのではないだろうか。
【追伸】
しかし、これだけアダルトビデオとか性器とかポルノとか書くと、
この記事にはアドセンス広告は配信されないんだろうな。
下に大きな空白がある場合は、
この記事はグーグルによってアダルト判定されたということです(苦笑)
これについて判例は一貫して「性行為非公然の原則」をその判断の前提にしている。
つまり、「いやらしいことはコソコソ隠れてやるもので人前に晒すものではない」ということだ。
この「性行為非公然の原則」に基づいて刑法174条や175条が定められている。
刑法
第百七十四条 公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
第百七十五条 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。
ここでいう「わいせつ」とは裁判所の判例によれば、
「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反する」
ものをいうとされている。
わかりやすいようにこの定義を区切ってみると、
①徒に性欲を興奮又は刺激させること
②普通人の正常な性的羞恥心を害すること
③善良な性的道義観念に反すること
ということになる。
アダルトビデオなどはこの3つの要件を全て満たしているように見えるのに
ネットでも実店舗でも普通に買えるのはどうしてなのか?
性器が見えなければいいのか?
この点、性器を見せず、性行為を写したのでもなく、
俳優の演技でそのように見えるようにしたポルノ映画ですら
わいせつ性が認められており(最判54・11・19)、
性器が見えるか否か、「裏」か「表」かは決定的な要素ではないといえる。
ますます訳がわからなくなってきた。
性器が見えても見えなくてもわいせつ性が認められるのに、
上に挙げたわいせつの3要件を満たしているように思えるアダルトビデオは普通に売られている。
では、今売られているアダルトビデオは合法ということになるのだろうか。
これも違うようだ。
実務家のための刑法概説 六訂版 川村博著 近代警察社 P535 より引用
「同じ程度のものが検挙を免れていたり、同じ物が一定期間検挙されなかったということがあっても、わいせつ性を否定したり、犯意を否定すべき理由とはならない。すなわち、そのような事情があっても、それは、その作品にわいせつ性がなかったからではなく、その度合いが薄いとみて取締当局が検挙・起訴を控えたことも考えられるし、また全国的に多数のポルノ映画・小説・写真誌などが大衆の前に次から次へと大量に提供され姿を消してゆくなかで、どれを検挙するか、どの程度以上のものを特に起訴するかは、他への影響もあって、細密周到な考慮を払わねばならないのであるから、不検挙・不起訴が、そのまま取締当局において、わいせつ性がゼロであると判定したことに結びつくものとはいえない」
つまり、アダルトビデオが売られているのは合法だからというわけではなく、
①わいせつ性の度合いが薄いものは警察が取り締まるのを控えているだけ
②大量のポルノのうちどれを取り締まるかについての判断は技術的に困難である
ということであるに過ぎないようだ。
結論としては、アダルトビデオにはわいせつ性があり、本来処罰の対象になるが、
大量に出回っているポルノ全てについてわいせつ性を判断して取り締まるのは不可能であるから、
性器の露出の有無を一応の基準として、
たまに見せしめ的に摘発しているということなのではないだろうか。
【追伸】
しかし、これだけアダルトビデオとか性器とかポルノとか書くと、
この記事にはアドセンス広告は配信されないんだろうな。
下に大きな空白がある場合は、
この記事はグーグルによってアダルト判定されたということです(苦笑)
COMMENT
勉強になりました!
違法性はあるが、摘発を控えているだけなんですね。
なるほどーでした。
違法性はあるが、摘発を控えているだけなんですね。
なるほどーでした。
なんだか納得いきません。
中途半端に摘発するくらいなら、猥褻物頒布罪自体をなくしてしまえばいいのに……。
違法なのか違法じゃないのか判断するのが困難な法律があるなんて、恐ろしいです。。。
中途半端に摘発するくらいなら、猥褻物頒布罪自体をなくしてしまえばいいのに……。
違法なのか違法じゃないのか判断するのが困難な法律があるなんて、恐ろしいです。。。